森井のコラム

2008年11月1日

不動産の市場変動

近年、不動産投資市場は過去のバブル時の投機的な行動パターンとは一線を画する形で急速に拡大し、中長期的スパンでの投資スキームを前提とした形へと変化しつつありました。
不動産は株とは違い、その市場は大きな変動を繰り返しますが、物理的には文字通り動かず、資産価格上昇局面以外での流動性は低いものです。
賃貸収益を維持し、物件を維持するためにも投資家はリファイナンス等に耐え、長期的投資戦略を貫ける資金力を持っていることが重要です。

ところで、ここ数年初めて不動産流動化政策により不動産の投資審査においてエンジニアリングレポート等による健康診断が行われました。
これにより、長期投資での適格性判断で必要となるファクターが調査されることで個々の不動産の維持管理コスト等の収支予測データが明らかにされ、投資判断がかなり合理化されました。

しかし、現在の投資環境の下ではこれらについての判断もさることながら、特に立地条件とスペックに気をつけた投資判断を行わなければなりません。
大都市部のオフィス等では個別物件の空室率が経験的に8%から10%程度になり、この状況が半年以上継続すると賃料は下落し始め資産価値が更に減少することになります。
空室率の予測をするにあたり、ステータスと利便性を共に兼ね備えた立地条件を、また、そこで求められているスペックレベルに達しているかどうかが特に重要な選別基準となります。

但し、底値で買い鞘抜きをして売るといったショートポジションでは、立地条件やスペックが悪い場合でも、それらの物件が持つボラティリティー(※1)が許容範囲に入れば当然投資適格となります。
これらのロングとショートポジションを適切に使い分けることが今後ますます重要になります。

現在、10億から50億程度の物件に対しての資金調達が最もきつく、このクラスについてはかなり割安で購入可能なケースも見受けられますので、安定収益が得られるであろう優良な物件から取引が成立していくでしょう。
今後、銀行の資本増強に伴う資金供給余力が増加し、徐々に市場に対する安心感も取り戻され、体力のある投資家の活動が活発になれば本格的な底入れとなります。

世界的な誘導金利の下落で、イールドギャップ(※2)は徐々に拡大していきますので、安定収益性を有する投資用適格不動産の優位性は高まっていく可能性が増大します。
人間のある限り市場変動が繰り返されるものであることは、未来永劫変わることはありません。

※1 ボラティリティー:予想変動率(この場合、下落局面での対応限界に対するもの)

※2 イールドギャップ:不動産の利回りから借入金利を差し引いた数値