森井のコラム

2006年6月1日

アメリカから見た日本市場

あっという間に日々が過ぎてしまい、前回のコラム発信から一ヶ月以上過ぎてしまいました。
先月は、ある投資法人の方のおかげで約10年ぶりにアメリカへ渡り、アメリカREITの生のお話が聞けるチャンスを頂きました。
このような機会を頂いたことに厚く感謝いたします。
10年ぶりのアメリカの第一歩は、ニューヨークでした。
マンハッタンの眺望を一変させた911事件以来、ようやく貿易センター跡地の再開発が動き出し、巨大なオフィスが供給されることとなりそうです。
とはいえ、意外にマンハッタンでここ10年で出来た新築ビルが少なく、基本的には大きな街並みの変化は感じられなかったというのが印象でした。
ただ、NYの方々の市場動向を聞くと、マンハッタンでの不動産取引はヒートアップしており市場金利を大きく下回るCAPレート(東京の優良ビルキャップをも下回る)での取引が最近見かけられ、限界に来ている感が否めない状況と感じました。
ただ、REITをはじめとした標準的な市場利回りは、5~6%とまだ理解が出来る範囲にあるようでした。
しかし、FFレートが5%程度の中、イールドギャップがほとんどなくなっているこの状況は本格的にREITが債権へ性質を変化しているといえそうです。
この状況を日本に置き換えてみるとどうなるか。
これには、中長期的な市場金利動向の予測が大きな前提条件になります。
私のアメリカの金利予測は、短期的にはインフレ調整を主とした目的で若干上昇するものの、経済成長の継続的な拡大は難しく長期的には4%程度へ向って低下していく可能性が高いと考えています。
日本については、経済の復権が叫ばれる中、企業経済は消費の拡大に支えられ短中期的には回復すると考えられますが、人口減少と高齢化の波は移民受け入れなどを大々的に実施できなければ徐々にボディーブローのように消費の低下をきたし、経済成長率の低下につながってくるでしょう。
その結果、日本の金利は1~1.5%程度上昇して落ち着きを見せそれ以降大きな金利上昇は考えにくいと思います。
不動産証券化や、大手デベロッパーの調達金利はこの一年実質的にかなり上昇してきているとは言うものの欧米の調達金利に比べればまだ桁違いに低いといえます。
低金利で調達した資金を海外の株式市場等で運用するヘッジファンドが行っているようなキャリートレードと趣は異にするものの、世界の不動産投資ポートフォリオバランスから見ても日本が低いことと、イールドギャップについてもまだまだ余裕がある状況から欧米の投資家から見た日本の不動産マーケットに対して買いのサインが多いのは事実です。
カルパースをはじめとした年金等の投資資金に加え、今後急速に発生する巨額なベビーブーマーの退職資金の運用先として、また、高騰を続ける石油市場から生み出されるオイルマネーの投資先としても日本の不動産は比較的安全な投資対象と考えられても不思議ではありません。
このような世界市場の動向を考えると日本の不動産マーケットの将来は、比較的明るいと考えられます。
ただし、忘れてはならないのは、姉歯事件以来注目を集めていますが違法物件に対しての厳格化等を含めた様々な管理体制への信頼確保や、様々なノウハウを有効に活用する能力の確保があくまで的確な投資の前提となっていることに注意しなければなりません。
また、過剰流動性が拡大傾向にあることと、不動産の金融商品化に伴って市場の多くが昔とは全く違った機関投資家によって構成されており、リスクに対して非常に敏感であることなど不動産投資の見方から大きく変化しています。
したがって、健全な不動産投資において今後の市場での重要な行動基準は遵法性と適切なリスク開示が特に重要になってくることでしょう。
ある程度は市場変動によって参加者の淘汰もあるかも知れませんが健全な熟成市場への成長を期待してやみません。
次回は、シカゴ 西海岸編です。